ご挨拶

日本宝飾クラフト学院記者発表会にて
平成24年3月19日
一般社団法人 日本宝石協会
理事長 伊藤 彰

この度、私ども一般社団法人 日本宝石協会 (General Incorporated Association Japan Gem Society, JGS) が、日本宝飾クラフト学院様と業務提携し、英国宝石学協会 (The Gemmological Association of Great Britain, Gem-A) が世界的に行っております宝石学教育を、日本における認定教育機関 (Accredited Teaching Centre, ATC) として担ってまいりますことをご報告申し上げます。国際的に認知された宝石学資格、英国宝石学協会特別会員 (Fellow of Gemmological Association of Great Britain, FGA) を本邦におきまして、輩出していけます事は、私どもにとりまして大きな喜びでございます。

日本における宝石学教育は、昭和40年(1965年)に任意団体 全国宝石学協会の前身、全日本宝石協会が設立され、宝石学資格GJ (Gemmologist of Japan) / CGJ (Certified Gemmologist of Japan) をスタートさせて始まりました。

第2次世界大戦後の日本における宝石・宝飾品の販売高は、昭和25年(1950年)当時で150億円程度と想定されていますが、宝石・宝飾品の輸入には関税が掛けられ、自由に輸入出来ない状況にありました。 そんななか、昭和28年(1953年)には、宝石類への物品税が創設され、大変商いしづらい環境にありました。

戦後の復興、朝鮮戦争による特需、東京オリンピックに向かうインフラ整備等と景気上昇が続くなかで、宝石・宝飾品産業も成長拡大して参りました。

そして、業界の諸先輩方のご努力・ご尽力により昭和35年(1960年)に宝石輸入の完全な自由化が達成されました。

輸入自由化に伴い宝石の大衆消費化時代が到来するのですが、産業を育成・拡大してゆくために、宝石の正しい知識・情報が求められるようになり、宝石鑑別と宝石学教育を担うべく、業界の諸先輩方による資金・人材の支援の下で全日本宝石協会が創立されたのです。

こうして始まりました宝石学教育ですが、昭和53年(1978年)には、英国宝石学協会 (Gem-A) の委嘱を受け、任意団体 全国宝石学協会が日本唯一のFGA認定教育機関(ATC) としてFGAを日本語で教育、資格認定試験を実施してきました。

任意団体全国宝石学協会は26年前の昭和61年(1986年)に鑑別・グレーディング業務、宝石学教育等の収益事業を株式会社全国宝石学協会を設立して任意団体から分離独立させ、宝石学の教育実務は株式会社全国宝石学協会によって運営が行われてきました。

任意団体は会員の年会費及び入会金を含む基本財産によって運営され、会員への株式会社全国宝石学協会の鑑別料金割引特典の付与、『ジェモロジィ誌』の発行と宝石学資格(GJ・CGJ)の授与を行ってまいりました。

46年に亘る宝石学教育において、GJ資格者:1642名、CGJ資格者:479名、FGAディプロマ資格者:282名 (全世界におけるディプロマ資格者は約9000名) を輩出し、業界に大きく貢献して参りました。

ところが、平成19年中頃から株式会社全国宝石学協会が行ったダイヤモンドグレーディング業務について、その判定に瑕疵があるのではないかとの疑惑が業界のみならず世論にて論ぜられる事態となり、平成22年(2010年)10月末の業務停止、自己破産と至りました。

当然のことながら、この自己破産によりGJ/CGJ/FGAの各宝石学コース受講者は、その受講権利を喪失されてしまいました。 しかしながら、それまで教育に携わってきた株式会社全国宝石学協会のスタッフ、自分たちも職を失ってしまったのですが『生徒達に何とか継続して受講コースを修了させてあげたい』との一念に動かされ、任意団体全国宝石学協会が一時的にその意志を継承し、この6月までのFGA教育が継続されてまいりました。

幸いなことに、任意団体全国宝石学協会が株式会社全宝協の破産管財人より、45年間の最大の遺産である各種宝石のコレクションを買い受けることが出来ました。 この中には、FGA各コースに必要な石、GJコースで観察する500石、CGJで観察する1000石も含まれており、このコレクション無くして宝石学教育の継続はありませんでした。

この間、平成20年12月1日施行の新公益法人制度に伴う任意団体の公益法人化をにらみ、宝石学教育継承のための受け皿として一般社団法人日本宝石協会が昨年3月に設立登記されました。 そして昨年5月には、英国宝石学協会Gem-A認定教育機関ATCの認可を受けました。

英国宝石学協会 (The Gemmological Association of Great Britain, Gem-A) は1908年に設立された宝石学教育機関です。

18世紀に始まる産業革命により世界経済の牽引車だった英国には、新しい知識・技術と世界中の富・宝石が集まっていたことでしょう。 そんななか、1904年にはベルヌイ合成ルビーが製造され、1907年には真円真珠の養殖成功と、天然以外の宝石素材が出回るようになった消費市場に、宝石鑑別の必要性が論じられ、英国ゴールド・スミスホールの教育委員としてロンドンに設立されました。 2008年に創立100周年を迎えたのを期に、呼称を慣れ親しんだFGAからGem-Aと改称すると共に、教育コース(ファンデーション・ディプロマ)のリニュアルが行われました。

世界的に有名な宝石学教育機関として、他には1931年に設立された米国宝石学会 (GIA) が挙げられますが、創立者Robert M. Shipley氏はFGA教育を受けた方であり、現在も米国におけるFGA教育受講者の70パーセントがGIA G.G.であるとGem-Aより報告されています。

カリキュラムが、より多くの宝石を観ることに重点をおいた教育方針のため、より深く宝石学を学びたいと思われる方は、必然的にFGAに向かうと言われています。実際、世界22ヶ国、42の学校にてFGA教育指導・試験が行われています。 実技指導だけですと、他に7ヶ国、16ヶ所にても実施されています。

今回の日本宝飾クラフト学院様との業務提携は、『受講生にとって、長期的に安心して勉強が継続できる環境を整えること』、より安定した経営環境の中、より多くの方に宝石に興味を持っていただき、宝石が鑑別出来るレベルの宝石学教育を、長期的に継続出来る状況を持ちたいとの発想からでした。

私共、日本宝石協会は、FGA教育実務に必要なノウハウ、過去の試験資料、器材・標本石の貸出し等、あらゆるサポートをさせていただくことをお約束しておりますが、この提案を熟慮の上、受け入れていただき、今日このような場を持つことが出来ましたのも、偏に日本宝飾クラフト学院、露木宏理事長様、大場よう子学院長様の教育に傾けるお心と感謝しております。 また、露木理事長様には、FGAファンデーションが免除となる日本宝石協会授与のCGJ資格の教育も検討中と胸の内を明かしてくださっています。

この場をお借りしまして、心より御礼申し上げますと共に、今後は手を携えて日本における宝石学教育を担っていきたいと思います。

ありがとうございました。

一般社団法人 日本宝石協会

〒110-0015 東京都台東区東上野1-26-2 東京美宝会館2階
TEL: 03-5812-4785 FAX: 03-5812-4786

理事長
伊藤 彰
副理事長
ニーラム アラウディーン   古屋 秀市
理事
伊東 直樹  酒巻 英樹  関根 和之  高田 富士夫  佃 裕二
望月 英樹  山本 裕唯  渡辺 幸春
監事
加藤 久雄  諏訪 恭一  村上 俊二
 
 
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