JGS宝石勉強会

こちらでは、JGS宝石勉強会 テーマKのご報告をさせていただいております。

「JGS宝石勉強会」についての概要はこちらにてご覧ください。

JGS宝石勉強会 テーマK

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このJGS宝石勉強会では、JGS 理事、株式会社髙田宝飾店 代表取締役 髙田富士夫氏ご協力のもと、氏の先々代様の貴重な珊瑚コレクションのうち50~60 点を鑑賞・観察させていただき、①珊瑚の種類 ②五島彫りなどについて学びました。

会場:
JJA 会館 3 階大会議室 A(日本ジュエリー協会)
日程:
2016年6月15日(水) 13:00〜16:00
進行:
テーマK 
珊瑚〜貴重なコレクションから〜
 
13:00~13:05
開会の挨拶
 
13:05~13:35
講義
パシフィックコーラル 吉本 房夫 氏
「サンゴの種類と名称」
 
13:35~14:15
観察・クイズ「産地+名称」
 
14:15~14:30
休憩
 
14:30~15:00
回答・解説
 
15:00~15:15
再観察
 
15:15~16:00
意見交換・アンケート記入
 
16:00
閉会
 
 
レポートはJGS広報部、松室理事によるものです。
 

JGS理事、髙田富士夫氏
珊瑚は我国では古来より七宝のひとつに数えられ、広く愛好されてきた宝石であり、見るべき宝石産出のない日本で世界に誇り得るのは、真珠と共に海の宝石である珊瑚だろう。
日本宝石協会は勉強会のテーマを「サンゴ彫物の鑑賞」と題して、6 月 15 日水曜日 JJA 会館で(株)髙田寶飾店(髙田富士夫理事)の御祖父のコレクションより 40 点を選び、講師に創業 130 年になる珊瑚専門のパシフィック・コーラル(株)の吉本房夫氏を迎え開催した。
【歴史】
宝石サンゴは、有史以前、少なくとも 5,000 年前から地中海沿岸で装飾品や薬品等の目的で利用されてきたといわれている。ドイツの旧石器時代(推定約 25,000 年前)の遺跡から、地中海の宝石サンゴ Corallium rubrum(ベニサンゴ)を加工した玉が出土したという記録がある。地中海産サンゴは日本にもシルクロードを介して(胡渡り)輸入され、正倉院にもサンゴの装飾品が収蔵されている。その後江戸時代までに、宝石サンゴは輸入品として日本国内に出回った。
日本産の珊瑚の歴史は思いのほか新しく文化9年(1812 年)に室戸の漁師が、漁労中に偶然サンゴがかかり、これを領主に献上したことが文章に残っている日本で初めての宝石サンゴ捕獲の記録だといわれている。当時の土佐藩はこの珊瑚が幕府に知られることを恐れ、漁師達にはこれを水揚げすることを禁じたとされている。この後、明治維新にはサンゴ漁は一気に解禁となり、明治 4 年(1871 年)には直ちに高知沖において、サンゴ採取が開始された。
その後サンゴの漁場は徐々に広がり、五島列島(モモ、アカ)、小笠原(モモ、アカ)、台湾(モモ)沖縄・奄美(ボケ、モモ)、八丈島・鳥島(モモ・アカ)南支那海(ボケ・モモ)。高知、鹿児島、長崎での漁獲の合計が、明治 34 年(1901 年)には 16トン以上の水揚げが記録され、日本はサンゴ輸入国から一気にサンゴ輸出国となる。昭和 40 年(1965 年)には、ミッドウェー諸島(シロ・アカボケ)でサンゴが発見された。
これらの漁は、全てサンゴ網を用いてのサンゴの採取であったが、昭和 54 年(1979年)、鹿児島県奄美諸島で、初めて潜水艇によるサンゴ漁が開始された。
 
 
標本のリストはこちらからPDFでご覧ください。
 
 
【宝石サンゴ(貴重サンゴ)】
「サンゴ」と呼ばれるうち、その骨格を研磨して、「宝石」に出来るような種を「宝石サンゴ」と呼ぶ。現在世界中で「宝石サンゴ」として漁獲されているもののほとんどが生物学的には腔腸動物、花虫綱、八放サンゴ亜綱サンゴ科に属する種類です。八放サンゴはプランクトンを食べて内部に骨格を作りながら増殖し、樹枝状の集合体を形成します。この集合体は海底の岩に根を下ろしたような形で生息します。 宝石サンゴ類はほぼ例外なく深海産です。数百メートルから千メートルくらいに生息します。また、宝石に加工される骨格は白からピンク、赤など美しい色を呈し、非常に緻密である。緻密な骨格を作るため成長は非常に遅く、アカサンゴの幹の太さの成長は 0.1~0.2 ㎜/年程度と言われています。 (これまでに採取された原木の太さから推定 5000 年というものもあった)
それに対して、浅いサンゴ礁にすむサンゴ「造礁サンゴ」は主に六放サンゴ亜綱イシサンゴ目に属する種類で構成されています。中がスカスカの泡状構造で研磨しても光沢は出ません。六放サンゴは骨格を形成する際、共存している藻(石灰藻)が光合成で生成する有機物を利用しています。そのため、光が届く浅い海(水深 20m以下)でしか、珊瑚礁は形成されません。また、珊瑚礁を構成する炭酸カルシウムは霰石であり、宝石となるサンゴ(炭酸カルシウムは方解石)とは異なっています。
【宝石サンゴの種類】
赤(紅)サンゴ
血赤と呼ばれる赤サンゴの原木は、高知県沖の海底、約300mに多く生息。
地中海サンゴ
「サルジ」または「胡渡り」と呼ばれ、イタリアはサルジニア島近海の海底約30mの浅海に多く生息している種類です。水深が浅い為成長も早く、あまり大きくならない。(大きな物でも高さ30cm程度)このサンゴは赤サンゴに似て美しい為、人気も高い。
桃色サンゴ
日本近海の広い範囲に生息している種類で、海底300m~500mで採取されます。その中でも高知県沖(宿毛)で採取 されるものが色、品質共に良いとされ、彫刻細工によく用いられる素材です。色は、エンジェルスキンと呼ばれるほのかなピンク色からオレンジ、桃赤と呼ばれる赤サンゴに近い色調を持つ。
本ボケサンゴ★
この種類は、厳密に言うと桃色サンゴに入ります。原木全体が、ほのかなピンク色をしており、加工すると非常に優しい色合と光沢が出てきます。現在では採取量も無く、幻のサンゴとなっています。このサンゴに類似した「マガイ」と呼ばれる種類がありますが、本ボケサンゴと見間違う事からマガイと名付けられた。
ピンク系サンゴ
一般的なのが、深海サンゴと呼ばれる種類です。この種類は東シナ海、ハワイ沖、1200m以上の海底に生息していて、特徴として白色に赤い模様を持ったもの、ピンク色に赤い模様を持ったものが有ります。この他にピンク系サンゴには、ミッドウェー諸島近海で採取される「ミッド」と呼ばれるサンゴや、ガーネサンゴ(深海ガーネット)、香港沖で採取される「ミス(姫)サンゴ」があります。
白サンゴ
東シナ海から日本近海の広い範囲に生息する種類です。基本的には桃色サンゴに分類されますが、白を基調としている為、分類、種類共に区別されています。中でも象牙色(淡黄白色)を持ったものは、希少性が高く、細工がより際立ち、仕上がりも美しい為高値で取引されます。
黒サンゴ
このサンゴは宝石サンゴでなく、造礁サンゴ(サンゴ礁)に分類されます。この為、ハワイ州政府が許可した、ハワイ在住の漁師のみ採取することが許されているものです。(環境保護の為)ハワイでよくお土産品として販売されています。
【五島彫り】
五島の珊瑚の歴史は、明治 19 年男女群島付近で赤珊瑚が魚網にかかり島に持ち帰ったのが契機になった。長崎県は宝石サンゴを原木のまま輸出するだけでなく製品にして輸出や国内販売を考え大正 3 年~5 年の 3 年間、今の通産省にあたる役所が長崎県古五島市富江町に珊瑚彫刻を教えるために、専任講師として大阪から一流の象牙職人を招いた。その技法が現在に伝わる五島彫りの基本となった。五島彫りの特徴としては、材料を贅沢に使い 2~3 段彫りと呼ばれる技法で、モモサンゴが多く使われた。宝石サンゴの中でも薄いピンクのボケ(エンジェルスキン)は現在では全く取れないので幻の珊瑚と呼ばれている。(資料「五島彫りについて」
普段見ることのない数多くの珊瑚原木を手に取り、五島彫りの緻密さに感激した勉強会となった。 吉本氏、髙田氏に深く感謝致します。

参加者から頂いたアンケート回答(PDFでご覧ください)

JGSでは、今後も様々なテーマで宝石シンポジウムや宝石勉強会を開催いたします。皆様のご参加をお待ちいたしております。