第5回JGS宝石シンポジウム

第5回JGS宝石シンポジウムでは、「エメラルドのオイル・樹脂による含浸処理、エメラルドの産地比較、オパールの産地比較と問題点」をテーマに、GIA Tokyo主任研究員の阿依アヒマディ博士をお迎えして、35ロットのエメラルドと15ロットのオパールを観察しました。

第5回JGS宝石シンポジウム ご報告

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会場:
JJA会館2F/3F  〒110-8626 東京都台東区東上野2-23-25
Tel: 03-3835-8567 Fax: 03-3839-6599
日程:
2013年7月24日(木) 12:30開場 13:00開始
主題:
エメラルド、オパール
 
 
MC挨拶:
13:00〜
今回の総合司会(MC)は渡辺幸春理事です。
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『本日検品いただきます標本石は、日本宝石協会所有のコレクションと、会員各社からご提供いただきました商品です。これから3つのテーマに分けたエメラルドとオパールをご覧いただきます。それでは、只今より第5回JGS宝石シンポジウムを開催いたします。 』
 
 
伊藤彰理事長の挨拶
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『JGS宝石シンポジウムでは、単に講師の話を聞くのではなく、自ら参加し、宝石を手に取り、自らの目で確かめ、顕微鏡で観察することにより、大自然の力を観じたり、人が手を加えた証を確かめます。 そして、観じたことを発言し、討論し、その中から真実を掴む、参加型体験学習の場を意識して提供して参りました。 自らが実物を手に取り経験することが、お客様に過不足なく宝石の真の姿を伝えるに欠かせない自信となると思うからです。 宝石のプロとしてお客様に信頼され、販売する宝石の価値、販売する人々の価値を高めることが出来る、一つの道と考えています。』
分科会:3班に分かれ、各班交代して全てのテーマA・B・Cについて観察。観察所感発表、意見交換。 また、協力鑑別機関、GIA東京ラボ主任研究員、阿依アヒマディ博士による科学的解説。
  1. エメラルドのオイル・樹脂による含浸処理 16 石を顕微鏡で観察
    ・・・天然石、処理石(オイル・樹脂含浸)、合成石
  2. エメラルドの産地比較 4グループに分かれて19ロットを観察
    ・・・天然石、処理石(オイル・樹脂含浸)、原石
  3. オパールの産地比較と問題点 4グループに分かれて15ロットを観察
    ・・・天然石、合成石、模造石、原石
科学的解説:
「エメラルドの含浸処理 その看破法」と題した講演と観察ポイントの解説は、GIA Tokyo主任研究員の阿依アヒマディ博士にお願いしました。エメラルドの処理に用いられる物質と、処理方法からその看破法までを詳細に解説いただきました。また、オパールの物質的構造から種類や産地に関する解説、エチオピア・オパールの問題点等も詳細に解説していただきました。
阿依アヒマディ博士
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  1. エメラルドをオイルに浸す処理は、3千年前の古代エジプトでも行われていた。現在、エメラルドの99%は透明感を改善するために何らかの処理が行われている。
  2. エメラルドの屈折率は1.57~1.59なので、この屈折率に近いオイル、ワックス、天然または合成樹脂を含浸処理に用いることで、キズが目立たなくなる。
  3. 近年人気のエチオピア・オパールは水分含有量が多いため、割れてしまう危険性が極めて高い。
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『以上の視点から、実際にエメラルドやオパールを観察する際に、詳しく解説します。』
テーマ A:
エメラルドのオイル・樹脂による含浸処理 
16石を顕微鏡で観察

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『貴重かつ多種多様なエメラルドを観察できて良かった。』
『エメラルドの含浸の特徴は分かりづらい』
『日常的に観察する機会のない合成石を観察できて良かった。』
テーマ B:
エメラルドの産地比較 4グループに分かれて
19ロットを観察

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『様々な産地のエメラルドを一時に観察できて良かった。』
『質の良い、特徴的な石を多く観察できて良かった。』
『単に聴講するだけではなく、実習の機会があったので楽しめた。』
テーマ C:
オパールの産地比較と問題点 
4グループに分かれて15ロットを観察

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『様々な種類のエチオピア・オパールを観察できて良かった。』
『観察の際に阿依アヒマディ博士のレクチャーを受けられて嬉しかった。』
『エチオピア・オパールのリスクを認識できた。』
全体会議:
松室明雄理事の進行で、テーマA・B・C全体を通しての観察所感発表と意見交換。

参加者全員が全体会議で観察所感を発表。それぞれ観察ポイントや感想が異なることを知ることが、この会議の成果となります。
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『エメラルドのオイルや樹脂の抜けには注意を要することを認識した。』
『異なる産地のエメラルドの外観と内包物を見比べられて良かった。』
『エメラルドの樹脂含浸処理の実験をやってみたい。』
『少人数の勉強会でもエメラルドを取り上げて欲しい。』
『エチオピア・オパールの問題点をはじめ、消費者に向けた情報発信を行って欲しい。』
『阿依アヒマディ博士の解説をもっと聞きたい。』
『観察時間がもっと欲しい。』
閉会挨拶:
ニラーム・アラウディーン副理事長
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最後にニラーム・アラウディーン副理事長が閉会の挨拶を行いました。
『皆さんの意見や感想がそれぞれ異なるように、一番綺麗だと感じる宝石もそれぞれ異なります。つまり、宝石それぞれに特徴があって美しさも異なり、それが宝石の魅力なのです。
今後もこの様なシンポジウムを継続して開催して欲しいとのご意見が相次ぎました。大変光栄なことです。
スタッフとして参加している役員はボランティアで活動を行っています。それは、長年宝石ビジネスに携わってきて経験したことや学んだことを、業界のために後世に残していきたいと考えているからです。
今日は多くの方々のサポートによって開催できました。GIA Tokyoの阿依アヒマディ博士をはじめ、理事の方々や準備に携わっていただいた方に心よりお礼を申し上げます。 』