第8回JGS宝石シンポジウム

第8回JGS宝石シンポジウム in 大阪では、「ピジョンブラッド・ロイヤルブルー等の呼称について」をテーマに、中央宝石研究所の北脇裕士博士と当協会監事、諏訪恭一氏を講師としてお迎えして、20ロットのルビー、20点のブルーサファイヤを観察しました。

第8回JGS宝石シンポジウム in 大阪 ご報告

※写真はすべて、クリックしていただくと別ウィンドウで拡大表示されます。
会場:
住友クラブ
〒550-0002 大阪市西区江戸堀1-13-10 成泉ビルディング
日程:
2015年1月15日(水) 12:30開場 13:00開始
主題:
ピジョンブラッド・ロイヤルブルーの呼称について
 
 
開会:
総合司会(MC)は松室明雄理事が務めました。
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午前中のJSC(Jewelry Study Club, JGS理事松室明雄氏主催)では、平成25(2014)年7月29日 〜 8月7日にJGS主催で行われた『ロシア・サハ共和国ダイアモンド鉱山視察ツアー』に参加された方々からお話をお聞きしました。
『ロシア・サハ共和国ダイアモンド鉱山視察ツアー』
第一部:協力鑑別機関、中央宝石研究所、北脇裕士博士による科学的解説。
  1. ピジョンブラッド・ロイヤルブルー等の呼称について
 
北脇博士のスライドを使っての科学的解説。
〜参加者によるレポートから〜

コランダムの色の違い  コランダム(Al₂O₃)のみで形成されると無色。
 他の元素が入ることにより色が出てくる。
 Cr=赤 Fe³⁺=黄 Fe²⁺/Ti⁴⁺=青 Fe²⁺/Fe³⁺=淡青
上記のような元素があることにより元素内または原子内での電子の移動と共に光の吸収が起こる。吸収されず透過した光が目に届き色を確認できる。

原石と産地
 大きく玄武岩か非玄武岩に分けられる。
 ・玄武岩:タイ、オーストラリア、中国、ラオスなど
 ・非玄武岩:マダガスカル、スリランカ、ミャンマーなど
産地によって中に含まれる元素に違いがあるらしい。

ピジョンブラット、ロイヤル・ブルー、コーンフラワーの呼称
現在国内にある鑑別機関では呼称の表記は無い。
海外の研究所では鑑別書に明記されている。
(研究所ごとに基準となるマスターストーンが存在する)

〜参加者による感想〜

 宝石は天然のものなので、基準となるマスター自体もそれぞれ異なり、判断が難しいものやソーティングをする人間によっても色の見方が違ってくるので、有色での彩度の明度の違いとなると、ダイヤモンドのようなわけにはいかず非常に難しいと思う。ましてや、各鑑別機関で使用する光源も異なり、それぞれの鑑別機関での表記も異なることがある。 なので、今回のセミナーでの題材になっていたように、ピジョンブラッドやロイヤルブルーなどの呼称だけが一人歩きすることなく、そして利益のための呼称であってはならないようにするために、業界自体が変わっていかなければ、お客様の不信感をますます募ることになってしまうと思う。

 
第二部:テーマについて観察。観察所感発表、意見交換。
  1. ピジョンブラッド・ロイヤルブルー等の呼称について
講師:
JGS監事の諏訪恭一氏の講義の後、活発なディスカッションがなされました。
〜参加者によるレポートから〜

宝石とは  〈定義〉
大自然が生み出したもので、美しく、長く身に着けられて価値を持ち続けるもの。

宝石の見分け方  宝石は7つの要素で見分け、品質レベルを確定する。

 
  1. 種類:色、硬度
  2. 産地:色味、蛍光性、原石群
    アメシストでもウルグアイ、ザンビア産は価値が高くなる。
  3. 無処理:高温高圧処理、オイル処理
  4. 美しさ:カットの方法(モザイク模様のパフォーマンス)
  5. 濃淡:濃すぎても淡くてもいけない。
  6. 欠点:傷、インクルージョン
    石が大きくなればVS2でも肉眼で見ることはできる。
  7. サイズ:大粒と小粒の役割

☆価値は需要と供給で決まる。
 市場に出回る宝石の数(供給)÷欲しいと思う人の数(需要)
    =稀少性の高さ(価値)

☆ピジョン・ブラッド
やや濃色の最高の赤色を示す表現に用いられ、ミャンマー産の特徴。
由来①:殺されたばかりの鳩の鼻の穴から出る最初の2滴の血の色
由来②:生きている白い鳩の目の中心の色

☆コーンフラワー(矢車菊の青)
最良のブルーサファイアの色の表現に用いられ、カシミール産の特徴と言われている。

☆ロイヤル・ブルー
やや濃色の良い青色を示す表現に用いられ、ミャンマー産の特徴と言われている。

〜参加者による感想 その1〜

 鑑別書に書かれているので、何となく使っていたルビー・サファイアの呼称について詳しく知ることができ良かったです。呼称の基準だけじゃなく、照らすライトなどにも国際的な基準がないことに驚きました。
 実習で多くのナチュラルルビー、ロイヤル・ブルーサファイアを見ることができ良い経験になりました。普段とは違う視点から宝石を見ることができ、他の方の意見も聞けて非常に勉強になりました。
 またこのようなセミナーがあれば参加したいと思います。

〜参加者による感想 その2〜

 今回、多くのルビーとブルーサファイアを一堂に見ることができてとても良かったです。
 ソーティングは、どのような宝石であるか・・・を宝石種、色、カット、カラット、サイズなどで記載されているが、美しさは記載されていない。 ダイヤモンドにしても、他の宝石でも同じことが言えるが、ソーティングだけで判断せずに、その石の美しさをジュエラーが自分たちの目でしっかりと見て、良し悪しを判断できるような経験を積むことが大切であると思う。
 ピジョンブラッド、ロイヤルブルーと呼ばれるビューティグレードの色の範囲外の石であっても美しい色、好みの色がある。実際、私は、個人的には、ロイヤルブルーよりも明度の低い青色が好みであるし、着ける人が満足できる美しい石、ジュエリーを供給できることが大切なことだと思います。そして、誠実に嘘偽りなくお客様へ販売することが最も重要なことであると思います。

 

標本石を提供いただいた協力社及び会員各社:
(株)アンブローズ&カンパニー、諏訪貿易(株)、(有)ワイティーストーン
ご協力、ありがとうございました。