繭山 達也 氏 マユヤマジュエラー (JGS会員)
4年ぶりの海外出張となった。PCR検査など無く、以前のように香港へ気軽に行き来が出来るようになった事は嬉しいことである。いきなり面食らったのは物価の高騰。経済的に日本が世界に大きく遅れていることを痛感した。コンビニのミネラルウォーターが250円、会場のサンドイッチ1,500円、ラーメン1杯3,000円。ジュエリーも地金や素材の高騰、円安も相まって4年前の2倍になった印象。
またあらゆる物が電子化していて便利になっていた。スマホには「eSIM」、香港版Suicaの「Octopus」もスマホアプリに、業者とのやり取りも「WhatsApp」や「WeChat」などのSNS。パスポートの更新すらネットで出来るようになった。
6月フェアは初訪問だったが、いつも訪問していた3月に比べ小規模で見て回りやすかった。不景気のため例年の6月に比べて一層出展数が少なかったとのこと。お目当てだったメーカー約10社は、今回ほぼ出展しておらず新規開拓を余儀なくされた。この状況だからこそ出展できる会社は余力のある会社だと思う。国内で入手出来ず、かつ現実的な店頭価格を出せるリーズナブルでハイクオリティーな商品を探して回った。
会場で目を惹いたのは赤、緑、青、紫、オレンジ等に地金をメッキした商品、イエローダイヤの台座にブルーメッキを施しグリーンダイヤに見せた商品、パステルカラーのエナメルやシリコンを用いた商品など常識に囚われないアイテムにジュエリーの可能性を感じた(日本人には当面は受け入れられそうもないが)。 また抜群の技術とセンスで名高いカッターVictor Tuzlukov氏のデモを間近で拝見できた。精密かつ個性的なカットを施した中石は、近年のシンプル&個性派ジュエリーを求める方に刺さると感じた。
日本企業の出展は多々見られたものの、日本人バイヤーは皆無だった。つまり卸を通じた海外発の最新作を国内で仕入れることが期待出来ない状況で、厳しい時期だからこそ川上で購入する事は他社と差別化するチャンスと感じた。そして会場のバイヤーは若いアジア人女性が大半を占めており、中堅男性社員や社長が仕入を行うシーンとはまるで違う。日本企業ももっと若い女性の感性を頼りに「お客様に売れる商品」ではなく、自ら購入して身に着けたい=「お客様が買いたい商品」を仕入れる発想に転換する必要性を感じた。
国内でも人だかりが絶えない貴瞬はSNSの告知を駆使して今回の会場でも客が殺到していた。日本のセカンドハンズはまだまだ世界でも需要があるようだ。 |